自分の行う実験についてよく知る

自分の行う実験についてよく知ることは重要なことです。

このことをきちんとできていない学生の方はとても多いです。あるいはこういうことを当たり前のようにできるようになった方が学生を晴れて卒業し、プロの研究者になると言った方が正確かもしれません。

みなさんがいま行っている実験について自分がどのように勉強したか思い出してみてください。人に教えてもらう、教科書を見る、インターネットを使って調べる、いろいろ方法はあります。その中でも私がお勧めするのは以下の方法です。

①人に教えてもらう。

②自分が行いたい実験に近い実験を行っている論文のメソッドを熟読する。

③できるだけ専門性の高い本を読み、さらにその本に参考文献として載っている昔の論文を参照する。

①は実験手技を学ぶ上で基本中の基本となることです。どんなに本をよく読んでも、実は文字にならないようなことが重要だったなんてことはよくあります。難しい実験になればなるほど、技術ある人に教えてもらえるかどうかが重要になってきます。本当に難しい実験ならば海を渡って教えを請いにいくなんてこともあるでしょう。

②で重要となるのは試薬の量やインキュベーションの時間などの具体的な数字です。数字に注目し、そして記憶しておく癖をつけましょう。似たような実験を行っている論文についてはなるべく漏れがないように検索しましょう。論文ごとの違いについてよく調べてそれらの数値に対する考察をしましょう。濃度、量、時間、温度、数などの客観的な指標を重要だと考えましょう。人の実験と自分の実験は数値のみによって精確に比較できるのです。

③新しい論文もたくさん読まないといけない中で昔の論文を読む時間はなかなか取れないかもしれませんが、それでも是非何個かはさかのぼって読んでみてください。例えばシークエンスなんかでは、初めて論文として発表された当時のサンガー法と今も行われている古典的なシークエンスの方法は少しですが異なります。またNGSと呼ばれる、効率を飛躍的に増したシークエンスの方法も近年行われるようになってきました。その昔サンガー法とは異なるタイプのシークエンスの手法もいくつか提唱されましたが今は行われていません。このように実験一つ一つに発展の歴史が存在するわけで、その歴史を学ぶことは誰も無駄とは思わないはずです。

 

実験の手順一つ一つにすべて意味があります。それらすべてについて理解しましょう。一つでもないがしろにできるものはないです。なんとなくやっているのはとても危険です。それまでうまくいっていた実験が突然うまくいかなくなることはよくあることですが、そんなときに何から見直していいのかわからなくなってしまいます。一度その状況に陥ると何週間、何か月をロスしてしまうことだってあるのです。コンスタントにデータが得られるようなシステムを作ってください。そのシステムを作るために時間を割いて勉強してください。

・・・以上、当たり前のことでした笑